データとAIで分析してみた「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の兆候
業務量が客観的に過多ではないにもかかわらず、強い疲労感を感じたり意欲が低下したりすることがあります。単に「どれくらい働いたか」だけでは説明できないこうした疲労の原因を把握するため、一ヶ月間の時間記録データを分析してみました。
この実験では、ToggleWearを通じて収集された一ヶ月分のデータをCSVファイルとして抽出し、AI(Google Geminiなど)に分析を依頼しました。分析の焦点は単なる総時間ではなく、業務のパターンと休息の頻度に合わせています。
分析に使用されたデータ例
AIは、以下のような形式のログデータを基に業務習慣の特徴を抽出しました。
"Description","Duration","Member","Email","Project","Tags","Start date","Start time","Stop date","Stop time"
"Research","0:14:20","FocusSeeker","user@email.com","ToggleWear","-","2025-12-05","23:51:22","2025-12-06","00:05:42"
"Final Review","0:05:00","FocusSeeker","user@email.com","ToggleWear","-","2025-12-06","01:05:16","2025-12-06","01:10:16"
AI分析結果:エネルギー消耗の原因把握
分析の結果、週あたりの総労働時間は40時間前後と適切に見えましたが、業務の「リズム」にいくつかの問題点が見つかりました。
- 業務と休息の断片化: 疲労の主な原因は業務量そのものではなく、休息なしに続く頻繁なコンテキスト切り替えにありました。夜遅くまで続いた作業は、翌日の午前の集中力を下げ、業務間の空白を増やす結果(いわゆる「ヴァンパイア効果」)を招いていました。
- 頻繁なタスク切り替え: ピーク時に平均5回プロジェクトを切り替えるパターンが現れました。これは深い没頭(Deep Work)を妨げ、脳の疲労度を高める要因となります。
- 休息サイクルの不在: 人間の自然な集中サイクルである90分を超え、6時間以上連続して働く「休息の砂漠」区間が多数見つかりました。
データに基づいた生活習慣の改善指標
分析されたデータを基に、以下のような改善策を検討することができます。
- 休息時間の明示的な管理: 休息を単なる空白ではなく、一つの「活動」と見なして記録することです。ToggleWearで「リカバリー(休息)」プロジェクトを設定し、目標の進捗率をウォッチフェイスに表示すれば、意識的に休息を取る助けになります。
- 物理的な信号を活用したポモドーロ: 騒がしいアラームの代わりにスマートウォッチの振動通知を活用すれば、周囲を邪魔することなく、決められたサイクルに従って休息を取ることができます。
- 視覚的な固定装置の活用: 現在遂行中のタスクをタイル形式でウォッチ画面に表示しておけば、他の細かな作業に視線が分散するのを防ぐ「視覚的な錨(Visual Anchor)」の役割を果たします。
記録されたデータは単なる過去の痕跡ではなく、自分の業務習慣を客観的に見つめ直させてくれる指標になります。時間を記録し分析するプロセスは、バーンアウトを予防し、より持続可能な業務リズムを見つけるための一歩となるでしょう。